「シーシャって、いつからこんなに流行ってるの?」
10年前、日本でシーシャを吸える場所はごく限られていました。それが今では全国に1,600店以上。渋谷や新宿には歩けば当たるほど店があり、地方都市にも専門店ができています。
この20年で何が起きたのか。データをもとに、日本のシーシャ史を4つの時代に分けて整理しました。
第1期:2000年代後半 ── 怪しげな飲み物の隣にあった
日本にシーシャが入ってきたのは2000年代後半。ただし当時は専門店ではなく、バーの片隅に置いてあるものでした。
「そのバーに行くと、注文すれば吸えるらしい」——そういう類の存在で、正直に言えば少し怪しく、手を出しにくいものだったと語られています。エスニック料理店や中東系バーの雰囲気づくりの一部、という側面も強かった時代です。
この時期、シーシャは「体験するもの」であって「通うもの」ではありませんでした。
第2期:2010年〜 ── 渋谷・原宿から「社交場」へ
2010年頃から、シーシャを主役に据えた専門店が少しずつ現れます。場所は渋谷や原宿——若者が集まるエリアでした。
ここで起きた変化が決定的でした。怪しいものから、ファッショナブルな社交場へ。内装がおしゃれになり、女性でも入りやすくなり、「シーシャ屋に行く」こと自体がひとつの遊び方として認知されはじめます。
とはいえ、この段階ではまだ東京の一部の話。全国的なムーブメントではありませんでした。
第3期:2016年〜 ── 専門店が一気に増える
2016年あたりから、シーシャ専門店の数が明確に増えはじめます。
背景にはいくつかの要因があります。SNSの普及で「映える」空間が拡散されやすくなったこと。ロシア系ブランドの流入で味のバリエーションが一気に広がったこと。そして個人が始めやすい業態だったこと——大きな厨房設備がいらず、小さな物件でも成立するビジネスモデルです。
この時期に「シーシャ屋の店主」という職業が成立しはじめ、フレーバーの知識やミックスの技術を競う文化が育ちました。
第4期:2020年〜 ── コロナ禍が決定打だった
そして、いちばん大きな転換点がコロナ禍です。
飲食業全体が打撃を受けたなかで、シーシャは若い世代を中心に急速に広がりました。逆説的に見えますが、理由ははっきりしています。
なぜコロナ禍で伸びたのか
大人数の飲み会が消えた → 2〜3人で長く過ごせる場所への需要が生まれた
「とりあえずビール」への疑問 → 酔わずに滞在できる選択肢が求められた
個席・ソファ席の構造 → 密になりにくい業態だった
1台60〜90分という時間設計 → 「短く切り上げる」飲み方と相性が良かった
さらにこの時期、「相席屋」や「パブリックスタンド」を展開するような大手企業がシーシャ業態に参入しはじめます。個人店の趣味的な世界から、産業としてのフェーズに入った瞬間です。
データで見る、今のシーシャ客
1,000人を超える規模のアンケート調査(シーシャカフェ&バー musch 実施)から、現在のシーシャ利用者像がはっきり見えてきます。
この数字が示しているのは、シーシャがもう「タバコの一種」ではなくなっているということです。
主役は20代、6割以上が女性、そして6割以上が普段タバコを吸わない人。喫煙者の遊びではなく、非喫煙者の社交としてこの文化は広がりました。日本でノンニコチンフレーバーがこれほど充実している理由も、ここにあります。
そして「初めて吸ったのは1年以上前」が65%、「直近1〜3か月以内にも吸っている」が85%、「月1回以上通う」が60%超。一度きりの体験ではなく、習慣として定着している——これが「ブーム」ではなく「文化」になったと言われる根拠です。
なぜ日本に根付いたのか
個人的な見立てを含みますが、日本の事情とシーシャの相性が良かったのだと思っています。
「飲まない社交」の受け皿になった
お酒が飲めない人・飲みたくない人が、居酒屋以外で長時間しゃべれる場所は意外と少ない。カフェは閉まるのが早く、バーは酒が前提。その隙間にぴったり入りました。
「長居していい」が明示されている
1台60〜90分という時間の枠が最初から共有されているので、居座る後ろめたさがない。日本人の気質に合っていたと思います。
ミックス文化が「趣味」になった
中東では単品で吸うのが普通ですが、日本では3〜4種を配合するのが当たり前に。極めがいのある奥行きが生まれ、リピートの理由になりました。
ノンニコチンという逃げ道があった
「タバコは無理だけど興味はある」層を丸ごと取り込めた。これが無ければ、ここまで女性比率も非喫煙者比率も上がらなかったはずです。
そして今、地方に広がるフェーズ
東京・大阪の中心部が飽和に近づくなか、シーシャ文化は地方都市へ広がる段階に入っています。函館もそのひとつです。
地方でシーシャをやることの意味は、都心とは少し違うと考えています。都心なら「今日はどの店に行くか」の選択ですが、地方では「そもそもシーシャを知らない人に、最初の一台を出す」ことが仕事になります。
だから当店は、ノンニコチン26種を含む72種類を揃えました。「タバコは吸わないけど気になる」という、いまの日本のシーシャ人口の中心にいる方に、ちゃんと応えられるようにするためです。
20年かけて、シーシャは「怪しいもの」から「20代の非喫煙者が月1回通うもの」に変わりました。函館の夜にも、その選択肢があっていいはずです。大門横丁で飲む前でも、締めでも、お酒抜きでも。初めての方には、いちばん軽いところから組み立てます。