「シーシャって函館だと他にどこでやってるんですか?」
お客様からよく聞かれる質問です。そして答えようとすると、意外と誰もまとめていないことに気づきます。そもそも北海道のシーシャは、どこから始まって、どう広がったのか。
調べてみると、これがなかなか面白い道筋を描いていました。公開されている情報をたどって整理します。
前提:日本のシーシャは、東京から始まった
まず全国の話を簡単に。日本の初期のシーシャバーが現れたのは2000年代前半、六本木や新宿など外国人の多いエリアでした。当時は中東料理店の一角や小さな専門店で、「体験するもの」であって「通うもの」ではありませんでした。
2010年代に渋谷・原宿へ広がり、2018〜2019年頃に一気にブーム化。2020年前後からは地方でも新規開業が続出します。
数字で見ると伸び方は極端で、2022年春に全国約1,013店、2023年初頭には約1,380店。2022年の調査時点で東京都だけで368店あり、これは同時期の都内スターバックス(381店)に迫り、マクドナルド(353店)を上回る数でした。
この全国史については別記事で詳しく書いています。日本でシーシャブームはいつ始まった?もあわせてどうぞ。
北海道の起点は、2008年のすすきのだった
ここからが本題です。北海道のシーシャの起点は、はっきりしています。札幌・すすきのです。
象徴的なのがArguila Cafe(アルギーラカフェ)。すすきの駅から徒歩2分、南5条西3丁目のビルの3階で、2008年から営業しています。全国的に見てもかなりの老舗で、トルコランプとペルシャ絨毯という正統派のアラビアン空間です。
ここが重要なところで──2008年というのは、東京でシーシャがブームになるより10年ほど前です。
つまり北海道のシーシャは、東京発のブームが飛び火して始まったのではありません。ブームが来るずっと前から、すすきのに種がありました。そこへ2018年以降の全国的な波が重なって、一気に芽を出した──という順番です。
札幌で「性格の分化」が起きた
ブーム期に入ると、札幌には方向性のまったく違う店が次々に生まれます。
- She loves you──後に函館ともつながる札幌の名店
- ugo──古民家カフェ+物販、2階が薪ストーブ付きのシーシャ室
- 水煙草純喫茶 雲──本がたくさん置かれた、居座りたくなる喫茶店スタイル
- Forever Rose、OKINAWA、Witch Room、LocoLoko(床に座って吸うスタイル)
- Casablanca、日ノ本水煙草、近年はC.STANDのような全国チェーンも上陸
「シーシャ屋」とひとくくりにできないくらいバラバラなのが、札幌の面白いところです。老舗のアラビアン、古民家、純喫茶、チェーン。ひとつの街のなかで業態が分化したことが、北海道のシーシャ文化の厚みになりました。
そして道内各都市へ
広がりは札幌だけで止まりませんでした。
旭川市
Shisha Kamui(3条通7丁目)──後に函館へ支店を出すことになります
帯広市
TARO'S HOOKAH、Bar Fumo
小樽市
冬虫夏草
北見市
いわしくらぶ(北見本店)
苫小牧市
.chill(ドットチル)
結果として、2022年時点で北海道のシーシャ店舗数は43店、全国4位。東京・大阪・愛知に次ぐ位置です。人口比で考えると、北海道はかなりシーシャが根づいた土地だと言っていいと思います。
寒い土地だから、というのもあるのかもしれません。冬に何時間でも座っていられる、暖かくて煙たい場所。北海道とシーシャは、たぶん相性がいい。
函館のはじまりは、西部地区の大三坂だった
さて、函館です。
函館のシーシャの歴史をたどっていくと、行き着くのが末広町の「大三坂ビルヂング」という建物です。
この建物、1921年(大正10年)築の旧・仁壽生命保険株式会社 函館支店。築100年を超える歴史的建造物で、大規模なリノベーションを経て、いまは複数の店舗が入っています。
ここに2021年8月7日、Cotton Boy(コットンボーイ) がオープンしました。運営は前述の札幌の名店 She loves you で、その姉妹店という位置づけです。店名は「シーシャの煙って綿飴みたいだよね」という何気ない会話から付いたそうです。
コロナ禍の時短要請の期間に店をつくり込んだ、という経緯も語られています。あの時期に「そろそろやりたいことやんなよ」と背中を押されて生まれた店、というのがなんとも函館らしい。
天井の高い洋館、大きな窓、カリモクの深緑のソファ、大正時代の金庫、薪ストーブ。札幌の文化が海を渡って函館に上陸した瞬間が、おそらくここでした。
そして Shisha Kamui 函館店
その後、同じ大三坂ビルヂングに Shisha Kamui 函館店 が加わります。旭川の Shisha Kamui の函館店です。
50種類以上のフレーバー、ノンニコチンの選択肢も豊富、炭のメンテナンスが丁寧だと評判のお店でした。大正の空気が残る空間そのものをコンセプトにしていて、「大正時代を彷彿させる空間でこだわりの水タバコを」というのが店の言葉です。一時期は「函館唯一のシーシャ専門店」と紹介されることもあり、函館のシーシャの顔でした。
そして2026年2月22日をもって閉店。事業譲渡先を募集するかたちで幕を下ろしています。
道内資本が函館に降りてきて、根づき、そして一区切りをつける。全国が2023年以降に入った「淘汰の時期」は、函館にもちゃんと来ていた、ということです。同じ業態をやる者として、あの空間がなくなったのは素直に残念です。
いま、函館でシーシャが吸えるお店
さみしい話で終わらせるつもりはありません。むしろ今の函館は、エリアも性格も散らばっていて面白い状態になっています。
西部地区(末広町・十字街エリア)
Cotton Boy(コットンボーイ)
末広町・大三坂ビルヂング1階。2021年開業、函館のシーシャの原点。歴史的建造物のホテルラウンジのような空間で、フードもドリンクも本気です。オンラインでシーシャグッズの販売もされています。
五稜郭エリア
Cig Smoke Store(シグスモークストア)
梁川町18-4 松木ビル2階、五稜郭公園前電停から徒歩5分ほど。2025年夏オープンの新しいお店で、シーシャ×古着×コーヒーという組み合わせ。フレーバーは100種類以上。全席電源・Wi-Fiありで、昼から作業しに行ける昼型のシーシャ屋です。
煙mixx.(エンミックス)
本町9-25 第5名美ビル4階。19時から深夜4時までという夜型。飲んだ後に流れ込める、バー寄りのシーシャです。
函館駅前エリア
SHIKINA函館ダイニング
シーシャと葉巻を用意している飲食店。ごはんを食べながら、という入り方ができる場所です。
函館シーシャアテナ(当店)
松風町10-2。20:00〜翌5:00の深夜営業で、ノンニコチン26種を含む72種類を揃えています。大門横丁で飲んだあとの締めにも、お酒抜きの長居にも使えるように組んでいます。現在プレオープン中で、9月1日に本オープンです。
函館は「街の構造」がそのまま店の性格になっている
こうして並べると、はっきりした構図が見えてきます。
西部地区は、歴史的建造物でじっくり。観光で来た人が、坂の途中で吸う煙。
五稜郭は、日常使い。昼から作業しに行くか、飲んだあとに流れるか。
駅前・大門は、夜の締め。地元の人が仕事帰りや二次会で吸う煙。
同じ「シーシャ屋」でも、函館では立地がそのまま性格を決めています。これは他の街ではなかなか見ない面白さだと思います。
全国が淘汰のフェーズに入るなかで、函館は専門店の数が増えたというより、性格の違う店が別々のエリアに立つという形に落ち着きつつある。減ったというより、分化したという感じです。
結局、どの店が良いのか
これははっきり書きます。
どの店も良いですよ。
これは丸く収めるための言葉ではなくて、シーシャという遊びの性質として本当にそうなんです。
シーシャは、フレーバーの味だけを買っているわけではありません。どんな椅子に座って、どんな音楽が流れていて、誰と何時間しゃべって、店員とどれくらい話すか。その全部が「その日のシーシャの味」になります。だから店ごとの違いは優劣ではなく、単純に「今日の自分に合うかどうか」でしかない。
築100年の洋館で、ゆっくり坂の街の時間を吸いたい日があります。古着を見ながらコーヒーで昼から一服して、そのままPCを開きたい日もあります。飲んだあと、深夜に誰かとどうでもいい話をしながら煙を回したい日もあります。
全部、正解です。
全国で1,000店を超えて、そこから淘汰が進んで、それでも残っているお店というのは、どこも「その店にしかない何か」を持っています。函館に残っている店も、全部そうです。ハズレを引く心配は、正直あんまりしなくていい。
もし函館でシーシャを吸ってみようと思っているなら、まずは行きやすいところに1軒行ってみて、気が向いたらもう1軒。それだけで、この街のシーシャの面白さはだいたい分かります。そして初めての方は、遠慮なく店員に「初めてです」と言ってください。どの店の人も、たぶんいちばん嬉しそうな顔をします。当店は深夜営業なので、他店が閉まったあとの時間に居ます。フレーバー一覧も公開しているので、来る前に眺めてみてください。
※本記事の店舗情報・営業状況は2026年8月時点で確認できた公開情報に基づきます。訪問前に各店の公式SNS等で最新情報をご確認ください。主な参照元:シーシャスイタイ「全国都道府県別シーシャ店舗数ランキング」、SHISHA MAP JAPAN、シーシャマガジン、She loves you 公式サイト、シーシャカムイ函館 公式サイト、各店公式情報。